長くて厳しい北海道の冬。
その北海道の冬を象徴するのが、オホーツク海に押し寄せる流氷である。
広大な海に浮かぶ流氷が、どんなものなのか直接見てみたいと思った。

ホテル「オホーツク渚亭」と能取岬
	「オホーツク渚亭」の夕食は、カニ、刺し身、炊き込み御飯、魚の包み焼き（？）、キンキのから揚げ、カレイに煮付け（オランダ煮）などが、次々に出て来て思ったより豪華だった。カニは身がギッシリ詰まっていて美味しかった。キンキのから揚げも、カリッと揚がっており頭から尾びれまで全部食べれるようになっていた。（小心者の私は目のついている頭までは食べれなかったが・・・） 食事をしていると、後から年輩の男性が食事にきて、私の隣に座った。「どちらからですか？」と聞くと千葉からと答えてくれた。明日札幌に行き、雪まつりを見に行くという事だった。ビールを片手に会話を弾ませた。 ９時近くになってから、最上階の７階にある大浴場に行った。時間が遅い為か、私の貸し切り状態になっていた。この大浴場では屋上からライトアップされたオホーツク海の景色を見ながら、お風呂に入る事が出来る。誰もいない湯船に身を沈めながら、１日の疲れを取った。 翌朝、目が覚めると、外は昨日に続き快晴のいい天気になっていた。朝日がオホーツク海を眩しいほどに照らしており、すばらしい景色が眠気を吹き飛ばしてくれた。朝食を食べ、チェックアウトしようとフロントに行くと、既に昨日の運転手さんが待っていてくれた。 能取岬はホテルからタクシーで１０分位のところにあった。運転手さんは朝に一度ここに来たらしく、朝霧が立ち上がり幻想的な景色が見れたそうだ。私が行った時は、朝霧は消えて無くなっていたが、目の前には１８０度以上の大パノラマが広がり、運転手さんが言っていた通り、昨日とはまた一味違った流氷の姿を見る事が出来た。１５分くらいその景色を楽しんだ後、再びタクシーに乗り網走駅へと向かった。

流氷ノロッコ号
２日目は列車を乗り継いで釧路に向かう。私が旅行したこの時期は、網走−知床斜里間を「流氷ノロッコ」号、知床斜里−釧路間を「マウントレイク摩周」号、標茶−釧路間をＳＬ「冬の湿原」号が走っている。 トップバッターは「流氷ノロッコ」号。昨日北浜へ行く時に少しだけ乗ったが、今日は終点の知床斜里まで乗る。車内は流氷見物の観光客で込み合っていたが、北浜駅に着くと１５人程度の乗客が降りていった。 車内にはダルマストーブが備え付けてあり、網の上でスルメを焼く事が出来る。えっ？スルメは自分で持ってくるのかって？いえいえご安心下さい。車内にある売店にて販売しております。売店ではその他に、小さ目のビンに入ったワイン（小さい紙コップが付いているので、その場で飲める。）や、キーホルダーなどのお土産品などが売られていた。私の後ろでは、ワインを片手に景色を楽しんでいる人がいたので、どこから来たのか聞いてみると、大阪からという事だった。出身は北海道で、何十年かぶりに北海道に来たという話だった。ワインを薦められたので、ご馳走になってしまった。 車内放送の案内を聞きながら景色を眺めていると、「右手に白鳥が留まっています。」と案内が入った。言われた方を見てみると、確かに河口付近に白鳥が数羽留まっているのが見え、反対側に座っていた人も一斉に右側を向きカメラのシャッターを押していた（ちなみに、右側は海と反対方向）。オホーツク海に別れを告げると、反対側に斜里岳が見え、終点に近い事を教えてくれた。

マウントレイク摩周号
	知床斜里からは「マウントレイク摩周」号に乗り換え、途中の標茶まで行く。既に向かい側のホームにはコンサドーレ札幌の大きなロゴの書かれた車両が、出発の時を待っていた。 マウントレイク摩周は４両編成で、その内３両が指定席である。指定席は団体客でほぼ満席だったものの、自由席は空いていた。途中摩周湖に近い摩周駅や、川合温泉にも停車する。川合温泉を過ぎた辺りだったか、車窓から硫黄山が見え始めると車内には硫黄の匂いが立ち込めた。

偶然鶴を！！
	標茶−釧路間にはＳＬ「冬の湿原号」が運行されている。機関車には「Ｃ１１−１７１」が使用されていて、客車２両、カフェテリア１両、緩急車２両で、釧路−標茶間を１往復している。このＳＬ「Ｃ１１−１７１」は去年の夏、ＮＨＫの連続ドラマ「すずらん」の舞台となった「明日萌」こと「恵比島」駅のある、留萌本線をＳＬ「すずらん」号として走っていた。座席を全車指定席で、自由席は無い。 この列車も団体客で一杯で、自分の席に行くと団体客の添乗員さんと一緒になった。どこから来たのか聞いてみると、東京から札幌の雪まつりと流氷を見に来たという。私が乗っていた車両の乗客全員が、その添乗員さんの受け持ち客だそうだ。このＳＬにもダルマストーブがあり、トロッコ号同様に網でスルメを焼く事が出来る。既にスルメを焼いてお酒を一杯飲んでいる人もいて、香ばしいにおいを漂わせていた。私も、あらかじめ標茶で買っておいたスルメを焼きにストーブのところへ行き、その中に混ぜてもらった。 四国から来ていた方とそこで話をしていると、列車は茅沼に止まった。すると、車掌が車内放送で「前方に鶴が留まっています。」と教えてくれた。それを聞いた瞬間、車内にいた全員（私も含む）が外に飛び出した。見てみると確かに４羽の鶴が、線路上に留まっており、全員が歓声をあげ見入っていた。ＳＬが発車する頃、鶴は揃って空に舞っていった。 列車は順調に走行し塘路駅に停車した。駅の側ではエゾシカ公園みたいところで、鹿が放し飼いにされていた。１５分程度の停車時間があった為、同じ車両に乗っていた観光客は全員鹿を見に降りて行き、車内には私と添乗員さんだけが残った。この辺りは鹿が結構多く、列車の走行中も、突然少し控えめの汽笛が数回鳴り、列車のスピードが落ちたので、何かなと思って外を見てみると、線路脇に数頭の鹿が立っていた。 発車の合図の汽笛が「ポーッ、ポーッ、ポーッ」と３回鳴り響くと、外にいた客も全員車内に戻り、列車は再び、真っ白く雪化粧をした静寂な雰囲気の釧路湿原を通り、最終目的地の釧路へと進んでいった。＜終わり＞ ２０００年２月９日〜２月１０日<天気：快晴！！>