北海道の短い夏。残り少なくなった夏の1日をＳＬに乗って楽しむことにした。
・＜留萌−黄金岬−＞

留萌は海と暑寒別連峰に囲まれた、小さな港町である。駅から車でおよそ１０分のところには夕日のきれいな事で有名な黄金岬もある。 駅前にはお土産やさんがあり、そこでは無料で自転車も貸してくれる。お土産やさんの中に入り、 黄金岬まで自転車で何分ぐらいか聞くと、１５分から２０分くらいと言われたので、私も自転車を借り、 店の人に地図で道を教えてもらい、岬まで向かった。 １５分程度で特に迷う事なく岬に到着した。岬といってもう少し小高くなっている程度で、下に少し降りるとキャンプに来た人たちが イカの足をえさに、小さなカニなどを釣っていた。 低いとは言えども見晴らし最高で、遠くは少し雲でかすんでいたものの、すばらしい景色だった。 岬の上の方には、「海のふるさと館」があり、展示室やレストラン・展望台などがある。 私も展望台に行き、海をお眺めているとそばにあった看板に「今日の日の入り時刻：１８：４８分」と書いてあった。 ここでまた私は迷った。今戻れば帰りのＳＬの出発時刻に間に合う。が、ここまで来たのだから、やはりきれいと言われる夕日も見てみたい。 時刻表を見ると、夕日を見てからでも帰りの列車には間に合う。夕日を見て帰る事にした。

・＜増毛−意外な名所？−＞

日の入り時間になるまで、まだたっぷりと時間が合った為、留萌のまだ先の増毛まで足を伸ばしてみる事にした。 留萌から増毛までは快速「増毛ライナー」が運転されている。車両は札幌と函館を結ぶ夜行列車「ミッドナイト」に使用されているもので、３両編成だった。 夕方近かった為か、乗客は私を含めて２・３人だった。 この列車にはカーペットカーも連結されていて、足を伸ばしゆったりとくつろぐ事が出来る。 私も靴を脱ぎカーペットカーで足を伸ばすと、窓からは太陽が眩しく照らす日本海が見えた。 列車は１５分ほどで終点「増毛」に着いた。 増毛駅は留萌本線の末端の駅。エンドレールがこの先が無い事を強調している。 ホームにはきれいな花が植えられていた。私がしばらくその辺を見ていると、どこからか２人ずれの小学生の女の子が 霧吹きを片手にやってきた。話を聞くと、どうやら当番制でこの花壇の世話をしているらしい。 留萌に戻る列車には、まだ１時間くらい時間があるので、駅の周辺をぶらついて暇をつぶす事に。 駅から数分歩くと、海岸に出る。そこからの景色を少しの間じっと見ていた。 道路に沿って歩いていると有形文化財「商家本間家」があった。 その近くにはかつて、宗谷・斜里・樺太の警備にあたった津軽藩が使用した「津軽藩増毛勤番越年陣屋」の跡地もある。増毛は今回で２回目だが、こういう所があったとは知らなかった。 意外にも１時間があっという間に過ぎてしまい、駅に戻ると帰りの列車が到着していた。

・＜黄金岬−夕日−＞

留萌に戻った私は、そのまま黄金岬へと向かった。 岬は波の音をＢＧＭにしながら、きれいな夕日をじっと眺める人たちで、静まり返っていた。 先程カニ釣りをしていた少年たちも、岩によじ登りじっと太陽が沈む様子を眺めていた。 日中暑い日差しをさんさんと降り注いでいた太陽は、西の空を赤く染め、海を黄金色にしてその表情を照らしていた。 そして１８時４８分水平線の向こうへ静かに沈んでいった。